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『我が家のヒミツ』奥田英郎著

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奥田さんの作品、ものすごく久しぶりに読みました。10年ぶりくらい?かな。

一時期、けっこうハマってたんです!。

特に『伊良部シリーズ』は最高に笑わせていただきました。おかしすぎて通勤電車で読むことを断念させられるくらい、笑えて笑えて仕方なかった。

『邪魔』『マドンナ』『ガール』『ララピポ』『家日和』

私が読んだことがあるのは、このくらいでしょうか。ね?どれも最近の作品ではないでしょ?(笑)

全体的にコミカルな雰囲気が漂い笑いもあるけど、しんみり泣けちゃう。

奥田さんはそんな作品を書かれることが多いように思います。

気分をあげてゆきたいときに、読むとよいかも。

この作品もそんな感じでした。

6編からなる短編集。

『我が家の秘密』

結末そのものには言及していませんが、お話の重要な部分について触れていることがあります。未読の方はご注意くさいね。

『虫歯とピアニスト』

なかなか、子供を授からない敦美がパート勤めをする歯科クリニックに、大ファンのピアニスト大西が患者としてやってくる。

これね、電車の中で読んでいて、思わず涙が出てしまった。

「若いときは自分の人生を大げさに考えるじゃない。過大評価もいいところなんだけどさ。ぼくもそうだった。自分の人生は有意義で輝いていないといけないと思い込んでいた。…略…。人間なんて呼吸しているだけで奇跡だろうって。ましてや服を着て、食事をして、恋をして。ピアノを弾いて。」

人間は呼吸をしているだけで奇跡、か。まったくその通りだ。それ以上のことはみんなオマケみたいなものじゃないか。

「何者かになりたい。ならなければ。」と若い頃は強迫観念のように思っていたものだ。

そして今は「何者にもなれなかった」という自分にかすかに失望しつつも、それを受け入れつつある。というか、受け入れざるを得ないのだけど。

「何者かになる必要はないのだ。」

そう思えたら、生きることが楽になることもある。

出世願望とか、人より目立ちたい、という願望が昔から少なくて。

でもそれって向上心がないみたい、前向きじゃないみたい?っていう、そんなギャップに苦しむこともありました。

「植物」のようにひっそりと生きてゆきたい。争うことも、戦うことも、したくない。

競争相手を打ちのめして、勝利を実感したいっていう願望があんまりない。

そんな自分が「怠惰」に思えることもあり、この先でこんなので生き残ってゆけるのかなって、ものすごく不安に駆られることもある。

「自分らしく生きる」ということは、年齢を重ねてもわからなくなるときがあり、いまだに生き方を模索して、落としどころを探している気がする。

世間一般の「~であらねばならない」と無理やりあてはめながら生きてゆくのは、ちょっとしんどい。必要以上に「前向きであらねば。」「積極的であらねば。」「向上してゆかねば。」「輝いていなければ。」と自分に強いるのは、けっこう辛い。

今、こうやって生きて呼吸しているだけでも奇跡なのだ、と思えたら、ないものねだりをする必要もなくなるな。

『正雄の秋』

正雄は会社での出世競争に敗れ、ポストを得たのは30年来のライバルだった。一線を退き、閑職に就くことになった男の心情。

元から出世競争は無縁な人生なので、この人の気持ちにはあまり共感できず。

それにしても出世争いに敗れたら、部署まで異動しなきゃならないのか…。ライバルの下で働くのもイヤかもしれないけれど、出世争いに敗れたことで、生きがいを持って取り組んできた仕事まで手放さなきゃならないなら、主人公が人生が終わったって気持ちになるのも仕方ないかな。

『アンナの一二月』

生まれたばかりの頃に両親が離婚。会ったこともなかった父に16歳になったアンナが会いに行く。育ての父よりもずっとイケてる「パパ」との再会に心を躍らせるが…。

「○○みたいなお父さんが欲しかったなぁ。」ってテレビ観ながら話していたら、後ろに父がいて「こんなお父さんはダメか?」と超寂しそうに聞いてきたことを思い出した。

私が16歳か、17歳の頃。

この頃って、平凡なのがかっこ悪く思えて、きらきらした別世界の人に憧れたりもするのよねぇ。今は父が大好きですけれどね。

『手紙に乗せて』

突然、母を亡くした社会人2年目の亨。自分よりも、配偶者を亡くした父の落ち込むようが気にかかってならない…。

現在、両親は健在ですが、同級生の中には親を亡くした人もちらほら出てきた。

私にもその時がいずれ来るのだなぁ。確かに、その人の気持ちに寄り添う、ということはなかなか難しいかも。あまり触れない方がいいような気もしてしまうし…。

両親は順番的に先に逝くものだけれど、配偶者に先立たれるのは両親の死よりもずっとショックを受けるだろうね。

定年後の人生が吹き飛んだ、っていうセリフがリアルだった。

老後は一緒に過ごすものだと思ってるけれど、もしもそうじゃなくなってしまったら…。想像しただけで、怖くてたまらない気持ちになった。

『妊婦と隣人』

出産を控え、産休・育休に入った葉子。引っ越してきたばかりの隣人夫婦は一向に外に出る様子もなく、仕事をしている様子もなく、生活感がまるでない。もしかして、逃亡中の指名手配犯なのではないか。葉子は気になって仕方がない。

いくらなんでも隣のこと気にしすぎじゃない?ってちょっとイライラした^^;

『妻と選挙』

N木賞作家の康夫は、かつてはベストセラーを連発した人気作家だったが、このところその人気に陰りが見えてきていた。ボランティア活動に熱中していた妻がいきなり、市議会選挙に出馬することに。最初は乗り気でなかった康夫だが…。

自分が日陰にいるときは、妻に太陽を浴びてもらいたい。これからはそうなりそうだ。夫婦はどちらかがよければ、ちゃんと幸せでいられる。

自分はこの先も、妻と支え合って生きてゆく。作家の寿命はあと十年がいいところだろう。つぶしは効かない。きっと頑固な老人になる。だから妻だけでも人生を充実させてほしい。半分は自分自身の逃避かもしれないが。

いいなぁ、こんな夫婦。

子供も大学生になり、すっかり落ち着いている夫婦だけれど。

長年一緒に過ごしてきたからこその、絆があるんだなぁってしみじみ。

以上、6編。

家族が抱える、さまざまな秘密。

それはありふれたものかもしれないが、だからこそ、そこに関わる人々の心情にも共感できるものがあった。

それぞれの話が非常に読後感のよい、ポジティブな雰囲気をもたらしてくれる作品集なので、ほっと一息つきたいときに読むとよいかも^^

by カエレバ

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