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『アナザー・プラネット』/もう一つの地球に、もう一人の自分がいるとすれば、会いたいですか?

本日の映画は『アナザープラネット』

パッケージの美しさが目に留まり、レンタルしてみた。

ちらっとあらすじをチェックした感じでは、ガッチガチのSFを想像していたのですが、これがまた予想外な展開だった。

しんみりと余韻が残るラストを含めて、ひじょうに私好み。

日本では劇場未公開ということですが、小粒ながら良作のヒューマン・ドラマでした。

予期せぬ収穫があると嬉しいものです。
お気に入りの作品になりました。美しく悲しく切ない物語です。

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『アナザー・プラネット』

基本情報

監督:マイク・ケイヒル

出演:ブリット・マーリング/ウィリアム・メイポーザー/ロード・テイラー

製作:2011年/アメリカ

2011年サンダンス映画祭審査員特別賞受賞。

主演のブリット・マーリングははかなさを感じさせる美人さん。

本作では脚本にも関わっているらしい。

ものすごーくお気に入りに作品になったので、マイク・ケイヒル監督の『アイ・オリジンズ」も観てみようと思っています。

調べたところ現在DVDは未発売ですが、Amazonプライム会員だとAmazon プライムビデオで観られるようです。 (⇒Amazonプライム詳細はこちら。)


アイ・オリジンズ (字幕版)

ケイシー・アフレックがアカデミー賞を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はテーマが似ており、ぜひおすすめです。取り戻せない過去、償いきれない罪に苦しむ男のお話です。

参考記事>>『マンチェスター・バイ・ザ・シー』/痛みとともに生きていく。ケイシー・アフレックがアカデミー主演男優賞を受賞した傑作ヒューマンドラマ。

ざっとあらすじなど。

主人公のローダは幼い頃に木星に見せられ、天文学者を夢見て17歳でMITに入学した秀才。人生は順調で、この先ずっとこの調子で行くのだと思っていた。

しかしパーティーで酒を飲んだ帰りに交通事故を起こし、ローダの人生は一変してしまう。

ローダが引き起こした交通事故で、著名な音楽家であったジョンは妊娠中の妻と子供を失い、一人だけ生き残った。ジョンは愛する家族に囲まれた生活を一瞬にして失ってしまったのだ。

ローダは事故後刑務所に入り、4年間服役。夢見た天文学者への道は閉ざされ、罪悪感に苦しむ日々を送っていた。

彼女が事故を起こした日。

夜空には見たこともない星が空に浮かんでいた。

彼女はその星見上げていて、事故を起こしたのだ。

その星は、地球にそっくりな星。

「第二の地球」だった。

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感想(ネタバレあり)

自分自身の罪と向き合い、罪を償うということ。

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引用:Another Earth (2011) – IMDb

「もう一つの地球」という設定はSF的なのですが、それはあくまでも「道具」に過ぎず、作品のテーマは「贖罪」。

自分自身の犯した罪と、どう向き合ってゆくのか。

どう償ってゆくのか。

そんな難しいテーマを取り扱った、ちょっと不思議なお話でありました。なんとなく『ガタカ』を思い出したかな。世界観はSFだけれども、根本のテーマは人間の生き方的なものっていう点で。

▼イーサン・ホーク主演『ガタカ』

取り返しがつかない罪

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引用:Another Earth (2011) – IMDb

静かに、静かにローダという女性の生活を描きながら物語は進んでゆきます。

全体的に青みがかったトーンの映像が今にも崩れ落ちそうなローダの心のようにはかなげで。

美しく繊細な映像が染みました。

人生で「なかったことにしたい出来事」って、誰にでもあるはず。

なかったことにしてやり直せたらどれだけいいだろうって、考えたこと。

私にもある。

しかしそれはどうあがいても不可能なので、これが自分の人生だと受け止めて生きてゆくしかないわけですが、ローダの場合は「なかったことにしたい出来事」が標準よりもはるかに上を行くものだった。

胎児を含めて3人の命を奪ってしまった。

その事実はごく普通の人間の感性から言えば、とても受け止めきれる現実ではない。

犯した罪は決して消えない。

刑務所で服役する=償いではない。決して。

ローダは罪悪感に苦しみ続けている。加害者である彼女は「辛い」とは絶対に言えない。言ってはいけない。人生を「楽しむ」ことも許されない。自分がそれを許せない。

いっそ死ねば楽になれるのに、それもまたできない。

死ぬに死ねないのもまた、きつい。

一方で幸せな日々を一瞬で奪われたジョンの立場だったら…。

絶対にローダを許せない。いくら謝罪の言葉を重ねられても、お金をもらっても。

そんなものはいらないから、奪った命を返してほしい。

時間を巻き戻してほしい。いっそ、お前が死ね。そう思うことだろう。

「若気の至り」は誰にでもあるけれど、取り返しがつかない事態が起きるか、そのまま無事に通り過ぎるかは紙一重。一瞬の差で、誰しもがローダの立場になりうるかもしれない。彼女は決して、悪人ではないのよ。

元は優秀な彼女にはそれなりに能力を生かせる仕事の紹介もあった。

しかし紹介された仕事はあえて断り、「人と関わらずに済む」として、ローダは清掃員として働く。

もくもくとトイレの落書きを消している姿が、妙に印象に残った。

その姿は罪悪感に潰されそうになりながら、自分で自分を罰しているようにも見えた。

ローダはジョンに謝罪をするために家を訪ねるも言いだせず、清掃業者だと嘘をついてしまい、定期的にジョンの家を掃除することに。

ジョンは荒れ果てた家で荒んだ生活をしており、ローダはそれを少しでも改善する手助けをしたいと考えた。料金として受け取った小切手は換金せずに、破り捨てて。

そうして二人は徐々に、交流を深めていく。一緒に食事やゲームを楽しんで。

少しずつ、荒れた生活から抜け出してゆくジョンの顔に笑顔が浮かぶこともあり、そのジョンの様子にローダも心も少し楽になるようで、ほっとする反面、ジョンがローダの正体を知った時にこの二人の関係がどうなってしまうのか、不安がチクチクと胸を刺しました。

▼加害者と被害者。ジョンはそれを知らない。

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引用:Another Earth (2011) – IMDb

やがて二人は男女の関係に。

そんな頃、地球にそっくりな第二の地球には「もう一人の自分」がいるらしいということがわかります。(科学者がもう一人の自分を通信するシーンあり。)

「第二の地球」へ行こうというプロジェクトが企画され、渡航希望者が一般からも募集され、ローダはそれに応募、合格を果たします。

で、そのことをジョンに打ち明け、ついに、真実をジョンに話し始めるのですが…。

この時のジョンの反応は、至極まっとうなもの。

そりゃ「出てゆけ」となりますわね。

なじられて、拒否されて、追い出されて、ローダもジョンも双方がひどく傷つく結果に。

取り返しのつかないほどの傷を負わせた側と、負わされた側。

許し、許される関係に到達できるのは、ある意味理想かもしれないが、それは幻想でしかない。

ローダがジョンにしてあげられるたった1つのこと。

それは「もう一つの地球への渡航チケット」を譲ること。

二つの地球は「ある地点」まではそっくりだった。

しかし、互いの存在に気づき、干渉し始めた瞬間に道が分かれた、という仮説を耳にしたから。

ローダは考えた。

事故が起こった時点では、もう一つの地球が発見されていた。

だとすれば、あの事故は起きず、ジョンの妻子は生きているのではないか?

4か月後、ジョンは「もうひとつの地球」に旅立って行った。

そしてローダの元には、もう一人の自分が訪ねてくる。

このラストシーンの意味は観る者によって解釈がかなり分かれたらしい。

バッドエンドと取るか、ある種のハッピーエンドと取るか。

どうだろう?

私は、もう一人のローダがローダを慈しむような優しい表情で見つめていたのが印象に残り、あちらの地球では事故は起きなかったのでは?となんとなく考えていたのですが。

  • 「もう一つの地球」そのものが、罪から逃れたいローダが生み出した妄想。
  • 同じように事故を起こしたから、公募に応募してもう一つの地球にやってきた。

さらっと調べてみると、こういう解釈をされている方がいました。確かに、こういう解釈も成立しますね。すべてが妄想だったとしたら、、、恐ろしくウツな結末だな…。

仮にもう一つの地球で事故が起きずに、ジョンの家族が生きていたとしても、そこにはもう一人のジョンがいて、ジョンの居場所はないはず…。

それでもいいから、彼は「生きた家族」に会いたかったのですね。ジョンはもう一つの地球で何を想ったのか。それも気になるところですが、一切描かれませんでした。

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もう一つの人生に、あったかもしれない自分自身の人生を重ねて。 

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引用:Another Earth (2011) – IMDb

「人生をやり直したい。」「なくしたものを再び取り戻したい。」

多かれ少なかれ、決して叶わぬことを知りながら、多くの人々がそのように願いながら生きている。

もう一つの地球を、切実な表情で見つめている人たちの姿が切なく、涙が滲んできてしまった。もしかしてあったかもしれない別の人生を、あってほしかったと願う人生に思いをはせているに違いない。

人生にやり直しは効かない、という残酷な真実からの逃避の象徴がもう一つの地球なんだなぁと。

もう一人の自分には、できることならば、まともな人生を歩んでいてほしい。

だからと言って、自分の人生が変わるわけじゃないんだけどね。

「自分自身を認識して、知ることは可能か。何を伝え、なにを学ぶのか。」(ローダの言葉)

いかなる過酷な人生であっても、自分自身から逃げることはできない。どこまでも向き合ってゆくしかない。

自分で目と耳を潰してしまったおじいさんとのエピソード。

宇宙で聞こえる不快な音も愛してしまえば気にならなくなる、という言葉。

意外に姉想いの弟くん。

重ねられた小さなエピソードが、今にも崩壊しそうなローダの世界にほんの少しの優しさやわずかな希望を添えていました。

以上、『アナザー・プラネット』の感想でした。

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