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『アメリカン・クライム』/その時、少女に何が起こったのか?実話を元にした物語。強烈な悪意と残酷さに放心状態になります。

本日の映画は『アメリカン・クライム』

アメリカで実際に起こった「シルヴィア・ライケンス事件」という、少女監禁虐待死事件を元にした作品。

同じ事件をモチーフにした映画で『隣の家の少女』という作品があるのですが、しばらく前に鑑賞したのですよ。

関連記事:『隣の家の少女』/加速してゆく悪意に、容赦なく打ちのめされる。実話を元にした作品。

あわせて『アメリカン・クライム』観たいなと思いながら、なかなか手が伸びませんでした。なんせ、少女を大勢で虐待する作品なので、胸クソが悪すぎなのですねヽ(#`Д´)ノ

『隣の家の少女』も怒りと不快感でグラグラしてしまいましたので。

じゃあ観るなって話なのですが、やはり気になります。で、観てしまいました…。シルヴィア役を演じるのは『JUNO/ジュノ』で予期せぬ妊娠をしてしまう女子高生を演じて、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた若手実力派のエレン・ペイジ

『JUNO/ジュノ』が製作されたのと同じ年にこんな役も演じていたのですね…。

※『JUNO/ジュノ』はAmazonプライム会員であれば無料で観られます。(2016年10月現在)

参考>>>Amazonプライム公式サイト

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『アメリカン・クライム』

基本情報

監督:トミー・オヘイヴァー
出演:エレン・ペイジ/キャサリン・キーナー/ジェームズ・フランコ
製作:2007年/アメリカ

主演のエレン・ペイジは『X-MEN』や『インセプション』などの大作映画にも出演していますが、私のオススメは『ハード・キャンディ』

女子高生が援助交際男に鉄槌をくらわす作品で、女性の私が見ても震え上がりそうになりました…。大事な○○○がアレな事態に…( ̄□||||!!

じわじわじわじわと男性を追い詰める、エレン・ペイジのサドっぷりは必見の価値ありです。

▽『ハード・キャンディ』はこちらの記事でも取り上げています。

関連記事>>>女性が怖い映画。絶対に敵に回したくない怖い女が登場するおすすめ映画

『アメリカン・クライム』のあらすじ。

若くして子供を産み、36歳にして6人の子供を育てるシングルマザーのガードルート。

年下の恋人アンディとの間にも赤ん坊が生まれたが、彼は養育費を払うとどころか金をせびりにやってくる。

困窮するガードルートはたまたま知り合った(!)ライケンス夫妻から、週20ドルでシルヴィアとジェニーの姉妹を預かることにした。貧乏子だくさん一家。ガードルートのアイロンがけの内職と、長女のアルバイト代でなんとか日々をしのいでいたものの、生活は苦しいのだ。お金が欲しい。

子供二人預かって週20ドルを得たガードルートは、食事は食パン一枚という質素さで節約を重ね、何とか乗り切れると目論んでいたのだが、なんと姉妹の親父が小切手を送ってこない(`Д´) ムキー!!約束が違うと怒り狂ったガードルートは、姉妹に虐待を加え始めるのでした。シルヴィアの悪夢の日々が始まります…。

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感想(ネタバレあり)

虐待する側の心理

映画は被害者のシルヴィアを語り手として、裁判のシーンから始まります。

自分が被害者である事件の裁判を自分自身でナレーションするという演出。裁判シーンと事件の回想シーンが交互に進んでゆきます。

視覚的な残酷描写で言えば『隣の家の少女』の方がきつかった。本作は直接的な痛い描写は多くないのです。しかし。

エレン・ペイジの振り絞るような絶叫と苦痛に歪んだ表情、事態が悪化するにつれて、放心したようになってゆく様子から、直接的な描写がなくても十分に痛々しさが伝わってきます。

エレン・ペイジがか細くて華奢で、まだあどけなさが残っているんですよ。そんな少女がものすごい悲鳴を上げるのですから、胸が痛んでどうしようもありません(ノ△・。)

その一方、虐待する側の心理描写が丁寧だったのが印象的でした。

当然ですが、悪いのは100%虐待をしたガードルート。しかし、彼女は彼女で、ものすごいストレスフルな生活を送っていたのです。

16歳で初めての子どもを産み、36歳にして6人の母。

だらしがなく自業自得だと言えばその通りなのですが、「次こそは幸せになりたい。」そう願いながら、ろくでもない男ばっかりに引っかかって来たんだろうと思います。

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引用:http://www.imdb.com/title/tt0802948/mediaviewer/rm4272199936

現在の恋人は11歳年下。長女のポーラとあまり年が変わりません。父親の自覚はなく、金をせびり、ガードルートを欲望解消の道具のように扱い、拒めば暴力も振るう。

持病の喘息に苦しみ定職にもつけず、財布の中にはわずかなお金しか入っておらず、どれほど引き出しを漁ってもからっぽ。一人の部屋で、焦点の合わない目でぼんやりと考え込むガードルートの様子は貧困に苦しむ不幸な女性そのもの。生活苦が心を荒ませるっていうのは、確かにあるだろうな、と感じました。

元々の気質ももちろんですが、そういった生活苦によって追い詰められて、虐待行為に出てしまったのかな、と。少し加害者寄りの視線も見られます。

一方、姉妹の両親もおおきな問題アリ!(゚д゚)(。_。)ウン!

仕事を理由にして、たまたま知り合ったばかりの女性にいとも簡単に子供を預けてしまう。小切手の支払いもあっさり遅れてしまうあたり、いい加減な親だったんでしょうね。

小切手が届ないことを責められた姉妹は地下室に連れて行かれ、ガードルートにぶたれることになるのですが。

妹想いのシルヴィアは、『妹の分まで自分をぶて』というのです。そして、その後もシルヴィアはジェニーをかばい続けることになります。

生活苦はガードルートを虐待へと駆り立てた理由でしょうが、さらに女性ならではの嫉妬もまた虐待の原因になっています。

シルヴィア姉妹がバニシェフスキー家に踏み入れた瞬間、バニシェフスキー家の女性から向けられた値踏みするような冷ややかな視線。女性なら多かれ少なかれ身に覚えがあるのではないでしょうか。

ガードルートの長女ポーラは母親似で、やはり男運がないのか、ろくでもない男と不倫をしているのですが、「あること」が原因で、シルヴィアを一方的に逆恨みし、嘘をついてシルヴィアの悪行をでっちあげ、それを鵜呑みにしたガードルートはどんどん虐待を激化させてゆくことになる、という…救いようのないスパイラル。

可愛らしいシルヴィアは男子にもモテる。イケメン男子にデートに誘われたり、彼女に片思いをしているリッキーもいる。ガードルートやポーラはそう言ったことも気に入らない。アンディとシルヴィアが話しているのを見て、「色目を使っている。」として、とうとう地下室に監禁され、外にも出してもらえなくなる。妄想も大概にしてくれ、と言いたい。

傍観者と、子供たち。

隣人夫婦は外まで聞こえる悲鳴をやりすごし、「面倒なことには関わりたくない。」と見てみぬふりをする。

子供たちは

 

「一番えらいのはママ。」

「ママはしつけをしているだけ。」

 

と誰一人ガードルートを止めることはせず、それどころか、近所の子供たちを地下室に呼び入れて、彼らを巻き込んでシルヴィアを遊び道具のように扱う。

縛られ、殴られ、タバコの火を押し付けられ…。

ガードル―トも子供たちの親たちもそのことは知りながら放置。

そして子供らは裁判で揃って証言する。

 

「なぜこんなことをしたのかわからない。」

 

大人も知っていることだから。

ガードルートが公認しているから。

皆がやっているから。

これはしつけだから。

シルヴィアはあばずれだから。

そんな理由で彼らは虐待に加担し、シルヴィアはみるみる衰弱してゆく。

まだ善悪の価値観が固まらない親が絶対的な存在である子供時代に、あのような風に異様な虐待光景を目の当たりにしてしまうと、子供たちは引きずられてしまうものなのかもわかりませんね。

ポーラがシルヴィアに同情した様子を見せ始めるも、ガードルートは「この世にはすべきことがある。」と言って、虐待を止めようとはしない。

ガードルートはこの時点でまだ「しつけ。」だと思い込んでいたんだろうね。

かと思えば、シルヴィアの汚れた体を拭いてやりながら、涙を流したりする一面も。罪悪感からの涙なのか、情緒が安定していない様子を見せます。

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引用:http://www.imdb.com/title/tt0802948/mediaviewer/rm4070873344

とうとうシルヴィアに好意を抱いていたはずのリッキーまでもが、虐待に加担する。

 

「この娘はお前以外の全員と寝た。」

 

ガードルートに炊き付けられたリッキーはライターで炙った針でシルヴィアの体に「私は高慢な売春婦」と、刻み付ける。

 

強烈にげんなりさせられた(’A`|||)

 

好きな子だから助けよう!とはならず、好きだからこそ、好意が憎悪に裏返ってしまった。

途中でもしかして助かるのか?って思わせるシーンもありますが、結末は現実の通りです。

シルヴィアは命さえも、奪われ、ガードルートと虐待に加担した子供たちは逮捕され、裁きを受けます。

ガードルートは裁判で謝罪の言葉もなく、単なる自己保身を並べるのみ。

自分がいかに苦労して子供たちを育ててきたか、どれだけ子供たちのために犠牲になってきたかを語るだけ。

その表情は心ここにあらずという風にも見えました。

 

彼女に下った判決は終身刑。20年服役したのち、出所したそうです。

 

その他の子供たちにも有罪判決が下り、その後の人生がちょこっと紹介されます。

シルヴィアの未来は奪われてしまったのに、奪った側の人生は当たり前のように続いてゆくんだなと思うとなんともやりきれない思いがしました。

残酷描写は『隣の家の少女』より緩やかとはいえ、本作もかなり胸糞が悪いです。

子供たちが虐待にごくごく当たり前のように加担してゆく様子、そして罪悪感を感じていない様子は、うすら寒くなりました。

観終わった後は、疲れて放心状態になりました。゜゜(´□`。)°゜。

では、最後に気になったことをいくつか。

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ガードルートの恋人アンディを演じるのがジェームズ・フランコ。

この映画の時にはもうけっこう有名だったんじゃないかと思うけれど^^;

ジェームズ・フランコだが演じるくらいなんだから、実はアンディは最後でいいやつになるんじゃないか?なんて、思ったら最後までクズでした。

裁判でのジェニーの最後の証言。

「皆は感情がないと言っていたけれど、泣いているのを見た。私は知っている。涙が出なかったのは、水が与えられなかったから。」

胸に突き刺さりました。・゚・(ノД`)

姉を助けたい気持ちはあったはず。しかし、行動を起こせば自分が同じ目に合される。そう脅されれば、幼い少女はなにも出来なかったも仕方のないことなのかも。

メリーゴーランド

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引用:http://www.imdb.com/title/tt0802948/mediaviewer/rm4087650560

シルヴィアの魂は苦痛から解放され、思い出深いカーニバルのメリーゴーランドに乗っているシーンで終わります。

それまでの凄惨さとのギャップが好きでした。あの幻想的なシーンがあることで、かえってやりきれない思いが心に残った気も。

以上、『アメリカン・クライム』の感想でした。

▼同じシルヴィア・ライケンス事件を元にした『隣の家の少女』。直接的な暴力の描写がきつめ。

原作もあります。

ネタバレ:『隣の家の少女』/加速してゆく悪意に、容赦なく打ちのめされる。

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