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好きなもの、好きなこと、日々の出来事について語っています。

『トールマン』/消える子供たち。

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トールマン(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [Blu-ray]

 

監督はあの『マーターズ』のパスカル・ロジェ。

 

鑑賞後のげんなり感、心がすり減りそうな消耗感…。今、思い出しても胸の奥がずっしりして胃の重~い感じが蘇ってくる…あの後味悪さ最強の『マーターズ』のパスカル・ロジェ。

 そんなわけでこの作品も相当えげつない内容を想像していました…。えんえんと痛々しい描写が続くのかなぁと。

 

その想像は 見事に裏切られることになります。

 

 

ってなりました(笑)

 

ネタバレは絶対に知らずに観た方がいいので、未鑑賞の方はご注意ください。

 

 

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『トールマン』

 

 基本情報

 

監督:パスカル・ロジェ

出演:ジェシカ・ビール

製作:2012年/アメリカ・フランス・カナダ

 

あらすじ

 

「マーターズ」で注目されたパスカル・ロジェ監督が、ジェシカ・ビールを主演に迎えて描くサスペンスホラー。6年前に鉱山が閉鎖され、急速に寂れていく炭鉱の町コールド・ロックで、次々と幼い子どもたちが行方不明になる事件が発生。人々は正体不明の誘拐犯をトールマンと名づけ恐れていた。町で診療所を開く看護師のジェニーは、ある夜、自宅から何者かに連れさられた子どもを追って傷だらけになりながらも、町外れのダイナーにたどり着く。しかし、ダイナーに集う町民たちは奇妙な行動をとり、やがて想像を絶する真実が明らかになる。トールマン : 作品情報 - 映画.com

 

感想(ネタバレあり)

 

事前に想像していたような身体的な痛々しい描写はさほどないものの、「最初に観た光景が途中から意味が変わってしまう。」という、作り手に見事に翻弄させられてしまった感が衝撃的でした。

 

加害者=悪、被害者=気の毒。

という構図が完全に当てはまらず、真犯人の動機が全面的に「正しい」とも言い切れないものの、共感できる部分があるだけに割り切れない重苦しいものが残ります。

 

消える子供たち。

 

アメリカでは年間で80万人もの子供たちが消え、ほとんどは数日で見つかるものの、1000人はこつ然と姿を消してしまうのだそうです。

 
物語の舞台は鉱山が閉山となり廃れる一方の小さな町コールド・ロック。
子供たちがこつ然と姿を消してしまうという事件が相次ぎ(総勢18人!)、子供をさらって行く「トールマン」を町の人々はひどく恐れていた。
 
主人公ジュリアは町の看護師で小さな診療所を一人で切り盛りしている。かつて医師として町民から慕われて尊敬されていた夫はすでに亡くなり、ベビーシッターのクリスティーンと一人息子のデビットと暮らしている。しかしその愛息子はある晩「トールマン」にさらわれてしまう。
 
  

 息子をさらった犯人に必死に追いすがるジュリア。

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出典:http://eiga.com/movie/77538/

 

車にしがみ付くも振り落とされ、犬に噛みつかれ、森に迷い込んで泥まみれ血まみれになりながらも息子を取り戻そうとする愛に溢れる母。

 

この時はそう思いました。

 

ジュリアは看護師として頼りにされ、失語症の少女ジェニーにも優しく接し、子供をさらわれ、おかしくなった女性へも気遣いを見せる優しい女性。

なぜこんないい人から子供を奪うのか!

 

怒りさえ感じました。この時は…。

 

「トールマン」を見失い、町のダイナーに連れてこられたジュリア。

しかし店にいる町の人々の様子がおかしい。店の外で交わされる怪しげな会話。窓の外からジュリアをうかがう住民の影…。

 

怪しげな祭壇に飾られた行方不明の子どもたちの写真。その中には先ほどさらわれたばかりのデビットの写真も…。なぜ?

 

危険を感じダイナーを抜け出したジュリアを町の人々が銃を持って追いかける。

 

町の人全員グルか!お前ら全員トールマンか!!

 

 

と思ったんですよ。この時はね(笑)

 

真犯人は…。

 

たどり着いた廃墟でデビットを見つけたジュリアだったが、しかしそこには「トールマン」の姿も。殴られて昏倒させられるジュリア。

 

デビットをさらった「トールマン」がフードを脱ぐと…。 

それはあの、子供をさらわれておかしくなった女性だった…。

 

おかしくなって子供をさらい始めたか!と思ったんです。

この時は…。

 

しかしデビットが「ママ!」と走り寄ったのはジュリアではなく、デビットをさらった女性。そう、その女性こそがデビットの本当の母親であり、誘拐犯はジュリアだったのです。。

 

 

ここまで完全に騙されました。はい、すっかり監督の術中に見事なまでにハマってしまいました。

 

冒頭で傷だらけのジュリアに警官が「子供はいなかった。」というシーンがあるのですが、あれはジュリアの子ども(=デビット)ではなくジュリアがさらった子供たちがいなかった、という意味なんですよね。

 

頭がおかしくなった風にダイナーを覗いていた女性はジュリアの様子を伺っていて、お客の様子がおかしかったのはジュリアが誘拐犯ではないかと疑っていたからだったのです。監督のミスリードのまんまと引っかかった(笑)

 

なぜ子供たちはさらわれたのか?

 

ジュリアは子供をさらう組織の一員だったんです。

目的は人身売買や臓器売買…じゃあないんです。 

 

ジュリア曰く。

子供たちにとってよくない「循環」が続いてる。
貧困の中で壊れた親に育てられ、壊れた大人になっていく。
 
子供たちをそんな「悪循環」から救い出すために誘拐し洗脳して別人として、めぐまれた家庭へと送り出そう。それが子供をさらった目的だったのです。
 
トールマンの正体は亡くなったはずのジュリアの夫。もちろんシッターのクリスティーンも共犯。組織的に劣悪な環境にある子供たちをさらっていたらしい。

 

貧しくても実の親に育てられた方が幸せか?

血縁関係はなくても経済的に恵まれた家庭に育った方が幸せか?
 
 答えは簡単に見つかりそうにないですね。
貧しい家庭に育っても自力でそこから脱出していく子供もいるでしょう。でもそれは少数派ですよね。大半の子どもたちは親と同じような人生を歩む…。
 
裕福な家庭と良識的な両親のもとで育てられたら、未来の選択肢も可能性も増えることは確か。子供の学力と親の経済力に相関関係があるという調査結果もあります。
 
 辛いのは子供をさらわれた親たちが子供を愛しているのがわかるから…。
愛していても子供によい環境を与えられないのなら、それは悪い親なのか…。
 
ジェニーの母親はもう一人の娘キャロルが産気づくまで妊娠に気づかなかった。しかもその子の父親が自分の同棲相手という劣悪な環境で、ジェニーが失語症になっても同棲相手と別れるつもりもないらしい。ジェニーをどれほど深く愛していてもいい親ではない。だとしたら子供を育てる資格はないのか?
 

ジェニーは自ら望んで「トールマン」にさらわれるという決断をする。

 

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出典:http://eiga.com/movie/77538/

 

 ジェニーは新しい環境で好きな絵の勉強をし、清潔な部屋で可愛らしくメイクをして声も出るようになっている。

 
しかし、これでよかったのか?とジェニーも自問自答している。自分を愛してくれ、自分も愛していた親を捨てて別人になることが果たして最善の選択だったのか?
何かを問いかけるようなジェニーの眼差しが印象的です。
 
ジュリアは子供たちが生きていることを秘めたまま、大量殺人鬼として裁かれる道を選びます。町民からも刑務所の囚人たちからも憎悪をぶつけられながらも耐える。ジュリア夫妻やクリスティーンの過去に何があったかはわかりませんが、バレた時の身の処し方を見る限り、生半可な覚悟ではないことが伝わってきました。
 
ジュリアたちが「正義か?」と聞かれればそれは「違う」と言い切れる。
でも親元に残すのが正しいことか?と聞かれれば、完全に「そうだ。」とは言い切れないものがあり、モヤモヤします…。
 
観客を驚かせるために少々「やりすぎ」「あおりすぎ」な部分があり不自然な感じもしますが、すっかり騙されたクチなので文句は言えません。
 

気になったこと。

 
スモーキングマン!

『X ファイル』のスモーキングマンが保安官役で登場。

先入観があるのでいい人を演じていても、黒幕に見えてしまいます(笑)

 

 

以上、『トールマン』の感想でした。

 

 

パスカル・ロジェの後味最悪の問題作。見た後のげんなり感がハンパないです。