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すきなものたち。

好きなもの、好きなこと、日々の出来事について語っています。

『ドライヴ』/それが俺の性(さが)だから。【ネタバレあり】

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ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品です。

先日、同監督の『ネオン・デーモン』を鑑賞したせいもあり、再度観てみたくなった。 

sakuraho.hatenablog.com

 

ちょうどCSで放送していたのです。

いざ観てみると、毎度のことながらだいぶ忘れていて(笑)新鮮な気持ちで観られた。

 


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観終わって感想をまとめようと、ライアン・ゴズリング演じる主人公の名前は、なんだっけ?と考えて改めて気づいた。

 

あぁ、彼はただの「ドライバー」

名前はなかった。

 

名前だけではない。

彼の生い立ち、過去、家族、何も語られない。

ふらりと自動車の修理工場にやってきたその男は、その工場で修理工として働きつつも、工場経営者のシャノンの口利きで昼は危険なスタントマン、夜は強盗の逃がし屋を生業としているという表と裏の顔を持つ。

 

口には楊枝を咥え、背中に大きなサソリの模様の入ったジャンパーを身に付け(なかなか着こなしが難しそうなデザイン。)、寡黙でほとんど表情を変えない謎めいた孤独な男。

 

そんな男が、たった一人の女のために危険を冒す物語。

クールでストイックな雰囲気が『サムライ』のアラン・ドロンを思い出させた。

 


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基本情報

 

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン

出演:ライアン・ゴズリング/キャリー・マリガン/ブライアン・クランストン

製作:2011年/アメリカ

 

あらすじ。

天才的なドライビングテクニックを持つドライバーは同じアパートに住むアイリーンに密かに想いを寄せていた。アイリーンとその幼い息子と徐々に親しくなってゆくドライバーだったが、アイリーンの服役中の夫スタンダードが出所してきたことにより、3人の幸せな時間は失われる。

 

しかし、スタンダードは借金トラブルに巻きこまれ…。

アイリーンたちにも危険が及びかねない状況を知り、ドライバーはスタンダードの強盗の手助けをすることにしたのだが・・・・。

 

というお話。

 

感想(ネタバレあり)

愛する女のために

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「たった一人の愛する女性のために」っていうのがいい。ものすごくいいヾ(=^▽^=)ノ

 

ほとんど表情を変えないドライバーがさ、アイリーンとその息子と一緒にいる時は、ふっと笑みを浮かべるのですよ。

この「ふっとした笑み」というのが実に高得点で、いわゆるギャップに萌えるっていうやつ。大昔からクールな男性が口の端に浮かべるかすかな笑みというのは、笑んだその瞬間に心臓を鷲掴みにされるような、強い衝撃を与えてくれます。

 

スーパーでアイリーンに遭遇した時、思わず避けてしまうものの、駐車場で車が壊れて立ち往生しているアイリーンたちを見て、少し逡巡し「意を決したように」彼女の元へ向かってゆくところも好き。好きな女性に声を掛けるというのは、ドライバーにとっては「重大事」なのですよね。

 

二人がじっと見つめ合いながら心を通わせて行く様子、息子を抱っこするドライバー。3人の様子は幸せな家族みたいで、ほのぼのとさせられます。

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しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。アイリーンの夫スタンダードが出所、さらにはトラブルに巻き込まれてゆく。

 

借金トラブルでぼこぼこにされたスタンダードが「このままでは家族まで襲われちまう。」と言った瞬間にドライバーの顔色が変わる。

一緒にいられなくても、アイリーンの幸せは守らなければ。という想い。

 

結局のところ、スタンダードの借金トラブルは一筋縄ではいかず、裏には怖い人たちの悪巧みが絡んでいて、ドライバーは追い込まれてゆくわけですが…。

 

それでもただ、「アイリーンのために」。

 

美しい光の描写と激しいバイオレンス描写が印象的。 

 

フォークで目玉ぐっさり、ナイフで腕の動脈すっぱり、顔を踏み潰す等々、なかなかバイオレンス描写がきついのですが、夜の街を切り裂くように走る車とか、窓越しのネオンの輝き等々、『ネオン・デーモン』同様、光の描写がとても印象的です。

色彩が強くて、闇と光の明暗がくっきりしてるのが、幻想的で夢みたいに美しい。

 

エレベーターの中で、二人が初めてキスするときの光の使い方も好き。

アイリーンがふわーっとした光に包まれて、キスする二人の周りに優しい光に満ちる。

 

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しかし、そのキスの後には、エレベーター内にいたヒットマンを容赦なく返り討ちにするという展開があって。

それを目の前で観てしまったアイリーンはドン引き…。

アイリーンは男がヒットマンだって気づいてないだろうし、そうなるとドライバーはいきなり行きずりの人に襲い掛かったヤバイ人。ドン引き止むなし。

 

キスした時点で別れを覚悟してたんだろう。最初で最後。きっともう二度と会うこともないけれど、想いを込めてキスしたかった。

 

エレベーターの閉まる扉の向こう側で、呆然とするアイリーンを見ているしかないドライバーの切ない表情もまた、ツボをしっかり押さえてくれている。

「君を守るためだよ。」なんて言い訳がましいことはわざわざ口にする必要もないのだ。

 

「あるところへ行き、もう帰れない。君たちと過ごした時間が一番幸せだった。」

 

ドライバーは電話でそう告げて、黒幕の元へ向かう。

 

 たとえもう二度を会うことがなくても自分が死ぬことになっても、愛する人を守りたい。そうせざるを得ないのはそれが自分の「性」だから。

ドライバーの着ているジャンパーの「サソリ」がアップで映されるたびに、「それが俺の性だから」というサソリの言葉が思い浮かんだ。

 

「お金」にはいっさい手を付けないのもいいね。目的は金じゃない。ホレた女のためにやったこと。 最後の最後までかっこいい。

 

『サソリとカエルの話』

 

サソリジャンパーが何度もアップで映るのはやはり意味があったようで。

作品中でドライバーが「サソリとカエルの話」を口にするシーンがありました。

 

それはこんなお話。

 

川を渡りたがっているサソリがカエルに背中に乗せてもらって渡してもらおうと頼んだ。

カエルは「背中に乗せたら刺されて死んでしまう。」と断る。

サソリは言う。「カエルを刺せば自分も溺れて死んでしまうのだから刺すわけがない。」

カエルは納得してサソリを背中に乗せて川を渡り始めるが、背中に痛みを感じ、刺されたことに気付く。

「なぜだ?」とカエルが問うと、サソリは答えた。

「それが俺の性(さが)だから。」

 

そうしてサソリはカエルとともに川に沈んでいった。

 

そんなお話。

 

このお話は『クライング・ゲーム』でも印象的に語られていました。

『クライング・ゲーム』は1992年のイギリス映画で、その年のアカデミー脚本賞を受賞しています。この作品自体はそんなに好きではないのですが、このシーンはとても好きです。

 


クライング・ゲーム [ スティーヴン・レイ ]

 

ちなみに『サソリとカエルの話』の元ネタはオーソン・ウェルズの『秘められた過去』(未鑑賞)だそうです。DVDにはなってないみたい。

秘められた過去 [VHS]

 

 

以上、『ドライブ』の感想でした。

 

 

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