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好きなもの、好きなこと、日々の出来事について語っています。

『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』/80人を救うために1人を犠牲にできるか?現代の戦争のあり方を描き、正義とは何かを問いかけてくる。【ネタバレあり】

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今年の劇場鑑賞1本目。

 

チケットは取っていたものの、なんとなく気乗りしないまま映画館に向かいました。

しかし映画に集中ができなかったのはほんの数分だけ。あっという間に映画の世界に引き込まれていました。

 

心から願いました、頼む、パンを買ってあげてくれ、と。(○ `人´ ○) タノンマスー!

 

▼DVDは2017年7月4日発売の予定です。

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『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』

基本情報

監督:ギャビン・フッド

出演:ヘレン・ミレン/アーロン・ポール/アラン・リックマン

製作:2015年/イギリス

 

プロデューサーとして『ブリジット・ジョーンズの日記』のコリン・ファースが名を連ねています。

 

『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』/12年ぶりの新作。果たして二人は結ばれるのか? 

 

あらすじ

 

イギリス軍諜報(ちょうほう)機関のキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、ケニア・ナイロビ上空の偵察用ドローンからの情報を基に、戦地からほど遠いロンドンでアメリカとの合同軍事作戦を指揮している。大規模な自爆テロ計画の情報をキャッチした彼女は、アメリカの軍事基地にいるドローンパイロットのスティーブ(アーロン・ポール)に攻撃を命じるも、殺傷圏内に少女がいることが判明し……。(シネマトゥデイ)

 引用元:http://www.cinematoday.jp/movie/T0021320

 

 

80人の命を救うために、罪もない1人の少女の命を犠牲にすることは許されるのか?

 

2時間弱の作品の中で、登場人物たちは厳しい決断を迫られることになる。

観ている私たちも自分自身に問い続けることになる。

 

正義とは何か?

正しい決断とは何か?

自分だったらどうするのか? 

 

戦争をテーマにした作品でありながら戦闘シーンはほとんどなく、物語はほぼ会議室の中での会話劇で進行する。

 

リアルな現代の戦争のあり方、刻々と迫る自爆テロの恐怖。

そして決断をし、行動しなければならない人々の葛藤、苦悩、躊躇。

 

スクリーンから一瞬も目を話すことができないほどの緊張感に溢れ、観終わった後にはどっと疲れてしまい、そして無力感を感じずにはいられなかった。

 

『クイーン』でアカデミー主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンと、2016年に死去したスネイプ先生ことアラン・リックマンの共演も本作の魅力。イギリスを代表する二人の演技にも圧倒される。

 

アラン・リックマンは本作が遺作となりました。

 

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 以下はネタバレしつつ、感じたことをつらつらと書きます。

 

戦闘シーンのない戦争映画

 

ロンドンにある軍の作戦本部、政府高官たちの集う会議室、ハワイのデータ解析センター、ラスベガスのドローン発射基地、ケニアの現地部隊。さらには中国やシンガポールにいる政府高官たち。

 

世界中の様々な場所をネットワークでつなぎ、離れていても「戦争」ができてしまう。 

その事実にまず愕然とさせられる。ニュースを見聞きして漠然とした知識としてはインプットされているけれど、映像として目の前で展開していく事態に驚くばかり。

 

つい先ほどまで、ごく普通に買い物をしていた人が向かった会議室こそが「戦場」。

そう、現代の戦争は「会議室」で行われるのだ。

 

ケニア現地部隊のメンバーが容疑者アジトにぎりぎりまで近づき、小鳥の形をした小型カメラで容疑者宅の様子を外から伺い、超小型の虫カメラを侵入させ、家の内部の映像までをも映し出す。

 

これらは架空のことではなく、実在するアイテムなのだという。

 

そのカメラから送られてきた映像をハワイで瞬時に解析し容疑者を特定する。

そしてその情報を元にロンドンで判断と命令を下し、ラスベガスから攻撃を行う。

 

容疑者は元イギリス人。

パウエル大佐が6年もの間追い続けてきた人物だ。

 

当初殺さずに捕獲する予定が、侵入した虫カメラが映し出したのは大量の爆弾が仕込まれたベスト。彼らが自爆テロが起こそうとしていることが発覚し、急遽殺害へと方針が転換される。

 

そしてまさに攻撃をしようとしたその時に、幼い少女が攻撃対象のすぐそばでパンを売り始めてしまうのだ。

 

この時点で観客たちは優しい父親に愛されて無邪気に遊ぶ少女の姿を 見せられている。すでに少女の愛らしさを知ってしまっている。

 

祈らずにはいられない。頼む、パン早く売れてくれ、誰か買ってくれ…(○ `人´ ○) タノンマスー!

 

誰が決断するのか?

 

このまま攻撃をした場合、高確率で少女に被害が及ぶ。

果たしてそれでも攻撃をすべきなのか?

 

一方で攻撃をしなければ、自爆テロで80人の命が失われる。

6年間追い続け容疑者を取り逃してしまえば、さらなるテロが引き起こされる危険も生じる。

 

それでも1人の少女の命を救うべきか?

それを誰が判断すべきか?

 

誰しもが決断したくない。

だから外務大臣、首相、アメリカ国務長官…次から次へと決断はたらいまわしにされる。

 

軍人であるパウエル大佐やベンソン中将は「攻撃すべき。」と主張し、政治家たちはそれを何とか避けようとする。

 

「80人は可能性でしかない。しかし1人の少女は確実に犠牲になる。」

「たとえ80人が死んだとしても、糾弾されるべきはテロリストであり、宣伝戦には勝つことができる。」

 

 

犠牲を出したくない政治家たちの言ってることもわかる。

彼らもきっと間違ったことは言ってない。軍人でない一般人の反応はむしろ彼らの方に近いかもしれない。

 

人の命は尊い。

80人を救うために1人を犠牲にしていいはずがない。

でも1人を救うためにその先に起こる80人の死を容認していいはずもない。

 1人を犠牲にすることが合理的に考えれば正しい判断なのかもしれない。

 

テロとの戦いを全面的に肯定するのでもない。理想主義的な平和を賛美するのでもない。ただ声高に戦争反対を叫ぶだけでは変えられない難しい現実がそこにありました。

 

ゲームのような…と言われるけれど。

 

上空数千メートルの「空の目=アイ・イン・ザ・スカイ」から地上を監視し、無人ドローンで「ヘル・ファイア」と呼ばれるミサイルをピンポイントで発射し、容疑者を殺害する。それを遠く離れたアメリカ・ラスベガスから行う。

 

目の前に殺害対象がいるわけでもなく、ただボタンを押すだけで人が容易に死んでしまう。「まるでゲームのようだ。」と表現されることがありますが、しかし決してゲームではない。ドローン・パイロットもごく普通の人間なのだということをこの映画は改めて思い出させてくれた。

 

どれほどテクノロジーが進歩しても人間はどこまでも人間。ロボットではない。

 

兵士たちには心があり、感情がある。新人ドローン・パイロットのスティーブは幼い少女が大きな被害を受けることをすぐに受け入れることはできない。

厳しい訓練を潜り抜け優秀で、メンタルも平均よりも強い人たちのはず。 それでも。

 

指先が震える。

どうか、パンが早く売れるように、間に合うようにと祈りを込めながら。

それでもミサイルの発射ボタンを押さなければならない。

 

彼らを動揺させまいと上官が常に気遣っているのも印象的でした。そう。訓練とは違う。どれほど訓練では優秀な結果を出していたとしても、いざ攻撃となれば動揺する人が多いんだろう。このボタン一つで人が死ぬんだと思えば、容易に撃てるはずもない。

 

でもこの作品はそうではない。彼らは命令に従って攻撃を行った。その結果に衝撃を受けつつも、きっと彼らはこの先も兵士であり続けるんだろう。

 

多くの人が気づかずにいる、気付かないフリをしている過酷な現実に心をすり減らしながら対峙している人がいる。 「戦争反対!」とただ理想を叫ぶことはできても、じゃあどうすればいいのか、という答えは見つからないまま…。

 

ドローン・パイロットのPTSDの問題を扱った映画で、『ドローン・オブ・ウォー』という作品があります。スティーブのような立場の人にスポットを当てた作品。気になっていたので、ぜひ観てみようと思います。

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もしも少女が身内ならば?

 

80人を救うための犠牲。

そう言い聞かせ少女の死を正当化しても彼女が自分の身内ならば、それでもボタンを押せるのか?

 

たとえ多くの命が救われたとしても大事な娘の命を奪った者たちをその父親は許すことはできるのか?

 

少女の父親は過激派とは距離を置き、娘を心から愛する善き父親だった。正義の名のもとに行われた攻撃が一人の善き父親を過激派に変えてしまうのかもれない。こうして憎しみの連鎖は深くなってゆくのだと暗澹とさせられた。

 

それを軍人に言ってはならない。

 

クライマックスでアラン・リックマン演じるベンソン中将が放つ言葉が、心に突き刺さります。

 

「恥ずべき作戦。」と政府高官に責められた時、彼は自身が見てきた地獄を語る。そしていうのだ。

 

「軍人に決してそれを言ってはならない。彼が戦争の代償を知らないなどと。」

 

この言葉が重い。

 

ベンソン中将だけではなくパウエル大佐も、少女を犠牲にしても容疑者を殺害しようとする姿は冷酷に映るかもしれない。

 

 けれど、違うんだと思った。彼女の背景や経歴は描かれなかったけれどパウエル大佐も相当な地獄を見てきているはず。だからこその決断だったのだ。

葛藤や迷いや罪悪感も飲み込んだうえで、彼女は彼女の正義を貫いた。

 

容疑者の殺害に成功しても、その表情は決して晴れない。キャサリンは眉根を寄せたまま難しい表情を崩すことはない。

 

今も世界にテロが溢れテロとの戦いが続き、多くの民間人が巻き添えで犠牲になっている現実があり、この現実の世界にあの少女やキャサリンやスティーブのような人たちがいる。現在、世界では1万台もの軍事用ドローンが活動しているのだという。

 

 

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アラン・リックマンを偲んで。

 

エンドロールでメッセージが表示されたときに、あぁ、やはり彼はもう本当にいないんだと改めて思った。

ハリー・ポッターのスネイプ役もいいけれど、私が好きなのは『ダイ・ハード』のテロリストのリーダー役ハンス・グルーバー。

 


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そして『いつか晴れた日に』の一途に一人の女性を思い続けるブランドン大佐。

 


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アラン・リックマンの低い声がとても好きでした。

テロリストとして脅しの言葉を吐くその声は静かな迫力に満ちていたし、愛の言葉を紡げば観てるこちらがとろけそうになるほど甘い声でした。

 

心よりご冥福をお祈りいたします。

 

その他、気になったこと。

 

攻撃を受けバラバラになった容疑者の遺体の映像を解析し「耳」の形で人物と特定するところ。「耳」の形は人それぞれで、実に色んな形をしているそうで。顔は整形しても「耳」を整形することは少ないので、「耳」で特定するらしい。

  

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