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『ひとがた流し』北村薫著

泣いてしまった。
号泣とまでは言わないが、嗚咽が漏れるくらいには泣きました。

 

『ひとがた流し』

あらすじ

アナウンサーの千波と作家の牧子、元編集者で写真家の妻の美々。牧子と美々は離婚を経験し、千波は独身を通している。念願だった朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された千波だったが、その直後に病が発覚し降板を余儀なくされる。不治の病に冒された千波とその親友牧子と美々の、3人の女性の友情と家族、愛を描いた物語。

 感想

千波の意志の強さと凛とした姿勢は、かっこよくて憧れるけれど、どこか痛々しく感じるものだった。一人で強くあり続けるって、並大抵じゃないから。

メインキャスターの座は、彼女のその意志の強さがあってこそのものだけれど、手に入れたと思った瞬間に、不治の病が発覚する。

彼女は病気を隠すことなく、自ら降板するんだけど、それもまた彼女の強さゆえ。
病を隠して、少しでも夢の場所に座りたいって思う人も多いんじゃないかな。

そんな千波が良秋に出会えて本当によかったと思った。
彼女に与えられた人生はとても過酷なものだったけれど、最期に本当の自分の弱さや醜さをさらけ出して、それさえ受け入れてくれる男性に出会えた。すごく救われた気がしました。一人の特別な人に強く想われることほど幸せなことはないから。

そして牧子と美々がそれを心から喜んだのもよくわかる。
二人が初めて結ばれるシーンは感動的だった。

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「やり直しがきかないことが好き」

そんな風に言える千波と、彼女の最期の苦しみをともにし、それさえも「掛け替えのない対話だった」って言える良秋。

一緒にいた期間は短かったけど、まさしく「伴侶」という言葉がふさわしい。素適な夫婦でした。

千波が良秋との出会いを「縁」って言葉を使うシーンも印象的だった。
そう「縁」ってあるんだよね。私もこれは信じていて、縁ある人とは出会うべくして出会うんだと思っている。

牧子、美々の三人の友情も本当に素適だった。
ここまでの長く続いている親友というものが私にはいないので、羨ましかったです。

女性の場合は結婚を機に疎遠になることが多いのだけれど、千波はそれぞれの娘とも仲がいいんだよね。そういう関係ってとっても貴重だし、そんなに長く付き合える友人と出会えるってそれもまた「縁」だと思いました。

章ごとに視点が変わるのもよかったです。
その人物がどんなことを考え、どんな風に感じるのか、またその人物が他の人物にどう思われているのか、それが良くわかるのでお話にぐっと深みが出たように思います。

本当にいいお話でした。

北村先生が書かれる文章は、日本語がは本当に美しく、大好きです。

以上、『ひとがた流し』の感想でした。

by カエレバ

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